「だから、勝負をしようよ、ソウタ。ボクと、自分自身を賭けて――存在証明をしよう」
夏休みが終わった二学期、俺こと藍田蒼汰はひとりの少女と出会った。名前は碧。姉でもなければ妹でもなく、幼馴染でもなければ友達ですらない。まったくの面識のな
い他人が突然、家に押しかけてきた状況に面食らう俺の間抜け面を嘲笑うように碧は言った。
「ボクは碧(あおい)。キミの中にある別の可能性っていうのかな? 有り体にいえば、ドッペルゲンガーってやつだね、うん」
ドッペルゲンガー? 胡散臭さのあまりに訝しむ俺だったが、そんな俺の好きな女の子やタイプ、周りには絶対に秘密にしていた夢を次々と看破していく碧。呆然とする俺に、碧は宣う。
「そんなキミにも嫌いなものがある。――自分自身だよ。キミは、キミが嫌いなんだ。でもさぁ、そんなキミに人格の主導権を握らせるの、ボクは嫌なんだよね。藍田蒼汰には、自分を好いて、胸を張って生きてもらいたいんだ」
それは、宣戦布告。藍田蒼汰という存在のアイデンティティを懸けた争奪戦の開幕を意味していた。
恋に友情に夢に。
青春のなかでドッペルゲンガーと争う『存在証明』が、はじまる。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-02 02:58:18
71388文字
会話率:58%
山脈と海に囲まれた、小さい島ながらも平和な国であるブッチランド。その王家には代々、宝石ラピスラズリのような輝きを持つ「碧い(青よりも深く濃い、緑と群青にちかいあおい色)瞳」が受け継がれると共に、ある言葉が言い伝えられてきた。
『未熟の
ラピスラズリは波乱と憎しみを生み、二つのラピスラズリは栄光と平和をもたらす』
貴族の中で高貴な色として好まれる金髪に、こぼれ落ちそうなくらい大きな碧い両目を輝かせて城下町を眺めるブッチランドの王子、チヒロ・アズール・ブッチランド。
チヒロは父であるブッチランド王が納める、長閑で平和なこの国が好きだった。しかし父は体調を崩したまま病に臥せっている。そんななか、15年前に亡くなったはずの兄が生きていると使用人が噂をしていたのを聞き付ける。何故生きているのなら城に戻ってこないのか、チヒロはまだ見ぬ兄に興味を抱いた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-12-20 09:00:00
260079文字
会話率:33%
雪町 真白(ゆきまち ましろ)は、夢を見る。
それは昔、海に落ちた時の夢。
あの時、彼女を助けたのは、一人の少年の人魚だった。
それから、数年後。夜のプールで彼女が見たのは、クラスメイトの水城 碧(みずき あおい)の秘密だった。
最終更新:2013-07-09 00:09:50
1455文字
会話率:44%