血と膿と泥だらけで発見された少女は過去の記憶が一部抜けていた。どのような生活を送っていたのかは鮮明に思い出せるが、母や父といった家族の顔と名前、どこに住んでいたのか、またその生活が終わった最後の一瞬間に何が起きていたのかが思い出せない。何よ
り致命的なのは、自分の名前でさえもわからないことだった。
彼女を引き取ったフォルタ夫妻のおかげで、その子供には「シャナ」という名前がつけられたが、肝心の記憶は戻らないまま、十一年の歳月が流れる。
誰もが振り向く見目麗しい女性となったシャナはある日の出来事をふと思い出し、民を守る騎士の試験を受ける。
髪を結いあげ、剣を腰にさし、十一年前からずっと持っている翠のペンダントを握りしめ、シャナは試験へと赴く。
彼女の人生は、そこから大きく変貌していくー
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-09-10 21:58:59
470文字
会話率:28%