この世界は『カイン・リセンツ』と呼ばれているらしい。
私、柊美冬はある日体調不良で仕事中に倒れてしまった。しかもずっと片想いをしてる人の目の前で。それで、彼に車で送って貰ってたはずなんだけど……
「おはようございます。目は覚めました?」
透き通るようなアクアマリンの瞳が、見惚れるほど綺麗な三日月を描いて私を見つめている。部屋の内装はまるで中世の欧米のよう。
「此処は『アリス』という喫茶店です。あなたはお店の裏庭で倒れてたんですよ?」
私が意識を失っている間に一体何が起きたのだろうか?目の前のメイドさんを呆然と見つめながら頭を抱えた。まだじんわりと頭が痛い。倒れていたって…それじゃあ、彼は?
「あの、倒れていたのは私だけですか?」
「…え?そうです、けど…誰かといたんですか?」
彼女話を聞けば、私は1人で倒れていた。なら、直前まで一緒にいたはずの春斗さんは?
《アリス、彼女は起きた?》
頭に直接響くような声に思わずアリスへと勢いよく視線を戻すと、彼女の肩に白いうさぎが赤いベストを付けてちょこんと乗っていた。背中に鳥の羽が生えている、兎が。
ちょっと待ってよ……
私は目を擦って兎もどきを凝視する。目が合った。
《あんた!俺が見えてるの?!》
話しかけられた。
私はもう一度ベッドに倒れるように沈んで意識を手放した。お願い、夢でいて。次、起こされるのも、起きて初めに見るのもあなたがいい。というか、ハルさんでないと可笑しい。だってあたしの最後の記憶はあなたの助手席に乗って寝てるところなのだから………折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-07-22 04:15:27
6164文字
会話率:63%
この世界にいる八人の魔女。八つの国をそれぞれ縄張りとする彼女達は長い時を思うままに生き、死んでいく。魔女の死後数年経つと、その国にまた新たな魔女がどこからともなく生まれる。
魔女は国を揺るがすほどの力を持つ。ある時は町や王を滅ぼし、ある
時はありとあらゆる貢物を要求する恐怖の象徴。
北の魔女として生まれた我は今日も北の国を脅かす。
ちょっとずれた魔女が織りなす北の国の話。
北の魔女の城のじじばばに温かく見守られたり、王城を混乱と笑いの渦に叩き込んだり。恐怖を振り撒いているつもりが、良縁と出世を約束する魔女として北の国の民を幸せに導いていく。
※一話は話タイトルに合わせて進めていく為、時系列的に並行に進んでいる場合があります。
※本編は北の魔女の一人称ですが、別視点からの閑話(現実)が多くあります。
※基本一話完結型です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-10-06 07:00:00
1927文字
会話率:43%