── ある強い雨の夜 暗い洞窟の奥で 私はあの人に出会いました ──
罪人となった一人の傭兵と、力を失った女神の物語。
以下、長いので興味がお有りなら是非
「ねえねえ、おばばさま。あのお話聞かせてよ。ゆうしゃさまのお話!」
「はいはい、わかったからこっちへおいで。このお話は、ばばの生まれるず〜と昔のお話じゃよ」
「うんうん!」
「勇者様はね、神様が鍛えた大きな大きな聖なる剣と悪魔が産み落とした瘴気を纏った剣、2つの剣を携えていたそうじゃ。そして女神と魔神、常に二柱の神様を従えていたそうじゃ。天も魔も、聖も邪も彼にとっては別段どうでもいいことだったのかもしれんのお」
「へえ~それでそれで」
「それでの勇者様は世直しの旅をしながら、飢えてる人を救い、悪人にはその道を説き、迷っている人を導き、人に害をなす魔物をちぎっては投げちぎっては投げ、この世の悪と言う悪を綺麗さっぱり片付けたのじゃ」
「うんうん、それで!」
「魔法みたいなものも使えての、不治の病で困ったひとがおったならたちどころに癒やし、吉凶を占い、この国を豊かで平和な国に導いた御方じゃ」
「すごいすごい!ボクもゆうしゃさまみたいになりたいな!ねぇねぇ、おねえちゃん、ゆうしゃさまってすごいね!」
「う~ん、なんて言ったらいいんですかねぇ。そこまですごいって感じの人じゃなかったような気がするんですけど。あはは……」
町外れにひっそりと佇む小さな墓。そこにひとりの女が、小さく膝を抱えていた。全体に広がる擦れ、苔、ひび割れから、かなり古いものだと確認できる。女はその場のしんみりした空気に似つかない朗らかな笑みを浮かべ、ぽつり口を開く。
「クーロンさんが伝説の勇者なんですって。しかも話がすんごいことになっちゃってます。あはは……」折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-02-02 13:12:12
475374文字
会話率:42%