戸上裕翔は幼馴染の少女を失った。
精神的支柱であり、唯一無二の初恋の相手を唐突な形で失ってしまった彼は、世界に絶望し、それ以降の人生をただ単調に過ごすだけの存在へとなり果てた。
他人と同じように見えても、常に心の奥底にある感情は凍えている―
―そんな存在に。
やがて時は流れ……幼馴染の少女を失ってから六年の月日が流れたある夜。
彼は目前で軽トラに轢かれそうになった少女の身代わりとなり、死んでしまう。
そして目覚めた死後の世界で、自らを『神』だと名乗る少年と出会った。
茫然とする彼に、神は言い放つ。『異世界で生きていく気はないかい?』――と。
少年は決断する。これまでとは全く違う世界、異世界で新たな人生を歩むことを。
彼は魔物や魔法といった存在が跋扈するファンタジー世界へと降り立った。
そして転生早々、この世界の過酷さを思い知った裕翔は生産職『調合師』として生きていくことを決意する。
――だが、世界は彼を逃がさなかった。
失ったはずの『彼女』との運命の再会。
開示される、世界の謎。
そして、自分がこの世界にやって来た『本当の』理由を知った時……裕翔は一つの願望を抱いた。
『もう、何も失いたくない』
身分不相応な願いを抱いた彼は、逃れられない変革の渦へと巻き込まれていく。
――これは、一人の少年が失った『モノ』を取り戻し、立ち上がり、自分なりの信念を見つけ出す物語。
*生産職要素はおまけ程度です。
*カクヨムにも投稿しています折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-03-29 18:55:16
230995文字
会話率:35%