かつて、魔女と呼ばれた女がいた。
銀の髪と氷の瞳を持つ女は、森の恵みを分け与え、人と静かに生きていた。分け隔てなく、ただそこに存在していた。それが平穏だと、信じていた。
ヴェルディナ王国の王女・ミアは原因不明の病に倒れ、ひとりベッドの上
に横たわっていた。自由のきかない体に絶望し、死にたい、と毎日過ごす。
そんな彼女の心を溶かしたのは、辺境の地からやってきた王子だった。その一点の曇りのない瞳に、一瞬で引き込まれた。
ミアは王女としての務めもある。脅かされる王国の分断に、裏切り。そして精霊が宿るとされるエリディオの地の魔女の伝説。
その呪いは、二人を容赦なく襲いかかる。
魔女は言った。
「愛を奪い、平穏を壊した人間たちに、思い知らせてやろうじゃないか」
自分勝手な人間ども。
「愛を裏切ったその罪を、世界を凍てつかせた償いきれぬその罪の重さを。一体、何に触れてしまったのかを」
魔女は求めていた、あの日に失われた愛の温もりを。
「愛は死んだ、もう二度と戻らない」
それを知るためならば、世界を滅ぼすこともいとわない。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-12 21:38:34
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