皇帝フリードリヒ4世は、得意の絶頂にいた。皇后の実家であるイリリア王国が、新興国に大敗。窮地に陥って援軍を求めてきたのだ。劣勢の続くイリリア王からの援軍の条件は、「皇后の子を次の王にする」という破格のものだった。これが成れば、我が子は2か
国を統べる覇者となる。皇帝権力の強化に心血を注いできた彼の最大の成果となるべき業績であった。
その、皇帝は、帝都のローゼンブルグ侯爵邸に行幸していた。援軍の将であるローゼンブルグ侯の、出陣の前祝いに招かれたのだ。
ローゼンブルグ侯爵と皇帝の間には少なからぬ因縁がある。侯爵の娘であるエミリアは、以前は皇帝の婚約者であったのだが、素行と皇帝への不敬を理由に婚約を破棄され、4年間に及ぶ謹慎処分を受けていた。
実は、この婚約破棄は、皇帝権力を強化しようと企てた、皇帝とその側近による陰謀であった。その秘密は皇帝の周囲のごく一部しか知らないもので、当然、侯爵にも知られていないはず。
ところが、それは既に侯爵家の者に知られていた。何事もなかったかのように尊大に振る舞う皇帝に、侯爵家が動き出す。
※人が死ぬシーンが出てきます。
※異世界恋愛ジャンルで連載中の『皇帝の罠、令嬢の罠』の基になった短編です。そちらの第21話、22話に本作のダイジェスト版が掲載されています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-03-11 18:14:37
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