王都は静寂に包まれている。
ここ数年、何度かの内戦があり多くの兵士が命を失い、また少なくない市民もその巻き添えとなった。
かつて、人間の死因は魔物によるものがほとんどであった。
しかし、一〇年ほど前、勇者によって魔物の頭目である魔王
が討伐されてから、それは過去の話となっていた。魔物の群れは人間世界から距離を取るようになり、この日の当たる世界はすべて人間の王国が支配するところとなっていた。
平和な時代が来るはずであった。
しかし――人間は新たな災厄を自ら、もたらすこととなる。
王国の内戦。
人間同士が憎み合い、殺し合う状況が数年にわたって続いた。魔物の攻撃にも怯まなかった王国首都ダブレ=ストは、いまや見る影もなく荒れ果てていた。
その中心にそびえ立つ王城。ルフォルツァ王国の王城として難攻不落を誇ったこの城も、瓦礫が散乱し傷をおった兵士がそこらにしゃがんでいた。
王城の最上階。『三重階段の間』には国王のみが座ることを許された玉座が設置され、普段であれば文武百官が直立不動で控えているはずであった。
いまはたったひとりの女性がその玉座に身を預けていた。髪には白いものがまじり、あまり顔色も良くない。しかしその精悍な顔立ちは、明らかに貴人のものであった。
だるそうに身を玉座に預ける女性。足元には数本のワインの瓶が転がっていた。
先月、内戦はようやく終りを迎えた。
その内戦を終結せしめたのが、彼女『護国卿』たるカロラ=アガッツィである。
本来であれば、自身の生き残りと権力掌握に喜びを隠せないはずでる。しかし、カロラを支配していたのは暗く、そしてどこまでも深い絶望であった。
ようやく手に入れた『護国卿』の役職も、今となっては空虚この上ないものであった。
カロラは記憶を巡らす。
勇者とともに、魔王を倒したあの一〇年前のことを――折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-08-08 17:39:35
22535文字
会話率:33%
なんやかんやで世界崩壊の危機が終結してから2ヶ月。
問題解決の当事者であったユリアーナ騎士団であったが、
王国祭と、それと同時に開催される騎士団長ティアレーゼの護国卿就任式を3ヶ月後に控え、
団員達はのんびりと平穏な日々を過ごしていた。
あのユリアーナ騎士団が運命厄災を終結させた物語のアフターストーリーという体になります。
実際はそのような前日譚は存在しないので、知らないゲームの拡張パック的なイメージでお楽しみください。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-03-20 21:04:32
262640文字
会話率:28%
かつてアストリアには、偉大な革命者とも残虐な独裁者とも呼ばれた男が居た。その祖父の後を継ぎ、幼くして護国卿となった少女レミアは混乱と荒廃の続くアストリアを立て直そうと奔走するも、未熟さから傀儡とされてしまう。そんな彼女が、西域にて巨大な海
洋同盟を作り出した英雄フィオメルと出会った。時を同じくして二つの勢力から新たな王が擁立され、対立が激化。動乱をゆくレミアの辿る道は――。
「どんな善人でも、自分に損をさせる他人を好意的に見たりはしない。統治者というのは、国民にとって関わらざるを得ない他人なんだ」
英雄と呼ばれた男は、時代を見据えて歩みゆく。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2014-01-10 21:05:51
72794文字
会話率:51%