蒸鉄郷。
そこは蒸気と歯車が支配する鉄の街。
少女は蒸鉄の街で生まれ、そして生きている。
人間が歯車を回し、歯車は街を回す。蒸鉄郷に生きるものはみな、与えられた仕事を遂げることで生を得る。
あるものは火をくべ、あるものは鉄を打つ。それ
ぞれに与えられた仕事は、まるで噛み合う歯車のように次の者へと動力を伝え、やがて数多の歯車が蒸鉄の街を回すのだ。
少女にとって、歯車を回すことが生きることであり、そして彼女はそれ以外を知らなかった。
ある日、少女は少年と出会う。
あまりにも蒸鉄の街に似つかわしくない、純白の少年だった。
少年は言う。
街の外に出たくはないかと。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-01-27 23:58:52
3932文字
会話率:21%