彼は関西系の中堅商社の東京支店に十三年勤務した。仕事は営業職であり、五年前に定年で退職したのである。退職後の仕事は何もしていない。退職時の役職は課長職で職の手当をしたものの、中々気に入った職が見つからなかったのである。退職の際の退職金は一千
万円であった。三年前、退職金の一千万円にこつこつ貯めた二千万円を加えて三千万円で株式投資を始める。
「三年間の無駄な株式投資した分を何とか取り戻さないと。現物では限度がある、信用取引をしよう。現物は会社が倒産しない限り、元金がゼロにはならないが儲けも少ない。株価の二割の元手で十割の株が買える。信用取引は最長半年間で決済しなければ成らない、それはリスクには違いない。リスクは有るけど儲けの多い信用取引の方が良い」
信用取引は、利益やリスクの少ない現物に比べ、魅力あるものに映ったのである。そして危険極まりない信用取引に手を出したのである。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-02-09 13:22:30
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