オレは至って平凡な、どこにでもいる熊本のサラリーマンだった。
与えられた仕事をして、上司にへこへこ頭下げて、雑用をこなす。
「ツヅキ!片山昭浩!この書類のまとめはまだできないのか!?」
「すみません。」
「絶対今日中に仕上げとけよ。」
どちらかというと作業効率は悪い方で、残業することしばしばあった。
しかし何もない日は、定時になれば家へ帰ってほっと一息。そこから独り身のために家事をし、酒を飲みつつ一日を終える。たまには友人に付き合って酒を飲み明かす日もあるが、基本はテレビを見ながらのんびり一人酒だ。
特に幸せでも不幸せでもない、平凡な日々を送っていた。
そんなある日…
定時に仕事を切り上げて寄り道せずに帰宅し、リビングの扉を開けると信じがたい光景が広がっていた。
家の中に、ジャングルが出来ている。
カーテンには蔦が絡まり、部屋の中央には何だかよくわからない木の実をつけた樹木があった。台所の床には、小さな花が2つ、3つと咲いている。最新技術を駆使した薄型テレビと、少し背伸びをした買い物だったかなと思っていた高級黒皮ソファにはコケがびっしり生えていた。
どうやらオレの人生は薔薇色ではなかったようだ。え、何、真緑じゃん?オレの人生って実は緑色だったの?女神様もお人が悪い。…あ、人じゃないからお神が悪い?
そもそもオレは、神様を信仰していない典型的な現代日本人だったのだから、文句を言うのはお門違いなのだが。
そこで、あまりにも非現実的な光景に放心していたオレは、ソファに座っている女の存在に気がついた。ずっとこちらの様子を窺っていたのだろうか。ばっちりと視線が合った瞬間、女に声を掛けられた…折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-08-02 09:29:26
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