季節は春。小雨が温かくて過ごしやすい日が続く。
「こんにちは、たんぽぽさん!」
一人の少女は、わたしにそう声を掛けた。
「あたしは、まき! 小学二年生! よろしくね!」
わたしは、たんぽぽ。路地にポツンと咲く、ただの花。
まきちゃん
と出会えたこの日から、わたしの物語が始まる。
「じゃあ急に止まんなよブス」
気さくで照れ屋さんのまきちゃんの幼馴染、しょうたくん。
「はいはい。まきちゃん、これかね」
厳しいけど優しいまきちゃんのおばあちゃん。
「わん!」
子犬のワサビ。
三人と一匹とわたしが過ごした一春の想い出。
「これ、あたしとしょうたのひみつにしない?」
二人の秘密。
「お前の、せいだ!」
「しょうた…………?」
二人の亀裂。
「犬っころに八つ当たりするなんざ、人間のすることじゃないよ!!」
乗り越えるべき壁。
わたしには夢がある。……いや、野心がある。
そして、わたしの野望。
わたしが辿り着いた一つの答えとは---。
たんぽぽの花言葉をモチーフとした一話完結型純愛成長物語。
さよならとは、言わなかった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-05-19 06:00:00
35094文字
会話率:48%