いつも利用している路線バスにおじさんが乗客として乗ってきたけど、なんて可愛らしいセンスだろう。
私が見つけたおじさんはきっと奥さんがいて、奥さんが用意してくれた服を楽しんで着ているのだろう……
と、妄想している私の脳内の騒がしい独り言。
最終更新:2023-12-07 12:16:23
1849文字
会話率:0%
ある広場で、青年は公園のベンチに座った。
空は澄み、目の前に広がる青々とした芝生の上を子どもたちが駆け回っていた。
今日はとびきりにピクニック日和で、そんな日の公園のベンチには、新聞を顔にかけて、のけぞって眠る男性がいるのは普通だろう
。
青年と背中合わせのベンチで眠る男性も傍から見ればそれに違いなかった。
青年は本を片手で持ち、空いた片手で鮮やかに男性の尻ポケットに入った書類を抜き出した。
それを合図に、男性は今目覚めたかのように時計を確認し、足早にその場を立ち去る。
青年は数十分後に立ち上がり、ゆっくりと街の中心部に歩き出し、ついには人ごみに紛れて見えなくなった。
そのポケットには、乱雑に入れられた彼の仕事。
新聞の一面は…
『勇者失踪』
四作目「勇者は、勇者になるために。」
魔王討伐後の勇者たちの短編集です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-01-01 19:10:38
40902文字
会話率:8%
俺は就活難民の22歳大学生、藤川生衛(ふじかわ せい)。すこしオタク。自称先端恐怖症(※我慢できなくもない)で歯医者と注射が何より苦手な俺はいつもと変わりない日を過ごしていたはずだった………のだが脈略もなにもなく気がついたら目の前に巨
大な獣がいた。何も出来ないまま喉笛を噛み切られて死んだ俺だが、次の瞬間には自分の死体がさっきの怪物に食われているのを見ていた。 わけも分からず自分が食われている隙に逃げ出した俺の目の前に広がるのは見覚えのない大地。着の身着のままスマホも何もない状況だったが何故か尻ポケットには100と英数字で書かれた知らない模様の紙幣が5枚入っていた。そのすぐ後に俺は知ることになる………タイトル通りのことを。
あまり死にたくない男がゲーム世界(たぶん?)でなんだかんだ死にまくる話、ここに開幕。
※身内ネタから発生し身内向けに冒頭だけ書いたものです。実はメインキャラが出るのはかなり後になります。とりあえず0章だけでもそのうち書ければいいなぁ………
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-06-09 20:32:17
5706文字
会話率:20%
信号は青のはずだった。
今日はやけに空気が冷たく、両手を温めないと悴んでしまいそうだった。昼に見たネットニュースで、過去最低気温と言われていたことを思い出す。雪は降っていなかったのに、踏みしめる地面は確かに凍っていた。滑らないように気をつ
けながら歩くと横断歩道に着いた。歩行者信号は赤で、待っているのが俺を含めて5人。学校帰りの高校生2人組、時計を気にしてるサラリーマン、買い物袋を持った主婦。
俺は大学の講義が終わり、バイトに向かう途中だった。車道の信号はもうすぐ赤になるところだ。3秒数えて足を踏み出す。信号は既に青だ。尻ポケットの中からスマホを取り出し時間を確認する。十分に間に合う時間だった。
真ん中に差し掛かったところで五月蝿いくらいの不協和音が響いた。咄嗟に振り向くと視界に飛び込んできたのは、白いトラックと運転手の見開いた目だった。
急ブレーキ、タイヤのスリップ音、クラクションの音。
瞬間、暗転。
頭の中でファンファーレが鳴る。
「おめでとうございます。この度、厳正なる抽選の結果、貴方は転生者に選ばれました」
「第2の生をお楽しみください」折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-11-20 01:05:06
1776文字
会話率:44%