「――お前に教えられることは、もう何もない」
それは、ひとりの少年に告げられる。これがもし、自分以外の者に向けられていたならば、免許皆伝。おめでとう。これ以上ない賞賛の言葉だっただろう。しかし、少年に告げられたのは、残念ながら賛美ではなく「
限界」だった。
そこは光と影の世界。影の恩恵を受けた人は、皆、己の「影を操る能力」を持っていた。
そんな【影法師】と呼ばれる能力者たちの中でも強者だけが暮らす秘境の里【桃幻郷】で、【太陽に背かれた子】といわれる無能の少年がいた。
無能は相対的弱者。体術だけなら村で一番の実力を持つ彼だが、信頼していた師範にもついに限界を告げられてしまう。無能は弱い。それが現実だった。
バケモノが跋扈する外界のせいで、里から出ることも許されない彼。外を夢見て鍛えてきたが、その望みが叶う見込みはほぼなかった。
しかし、そんな彼に転機と出会いが訪れる――。
これは、ひょんなことから影を操る力を手に入れた少年が、国で一番安全な場所にマイホームを持つことが夢だと騒ぐ恩人の少女と、その相棒のしゃべる狼犬に影を操る能力や世界のことを学びながら、強く生き抜く成長譚。
――少年は力を得て、やっと公平な土俵に上る。
※同じ世界観で書き直すか迷っています。序盤だけ投稿して、やっぱり面白くないことが分かったら、作品を削除すると思います。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-05-15 15:52:43
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会話率:36%