ある日、学校にやって来るようになった猫――
その猫は長い毛並みと三色の色あいから、〝モミジ〟と呼ばれるようになった。
モミジはきれいだけど、怖い猫だった。誰にもなつかず、媚びたりもしない。それでいて相手を自由に、好きなように操ってし
まう。
でも、ヨシ君だけは例外だった。
ヨシ君とモミジは、不思議な関係だった。そこにあるのは愛情でも、信頼でもない。でも親密で、仲がいい。まるで、夕暮れ時に足元にくっついて家まで離れない、影法師みたいに。
そんな二人(一人と一匹)を見ながら、わたしは自分でもよくわからない、小さな胸の痛みを覚えるのだった。
でもある日、そんなモミジが踏み切りの近くで死んでいるのが見つかる――
(23/6/19~23/7/18)折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-25 00:00:00
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