その日俺は知ったんだ。
この世界では勇敢な者が先に死に、何も出来ない俺のようなゴミが生き残るのだと。
勇敢な彼女は奴らに喰われて死に、無能な俺は彼女に守られて生き延びた。
失意のままに治癒院まで彼女を運び、無理と知りながら頼んだ
。
「彼女を生き返らせてくれ」
当然無理だ。そんなことができるなら、ジャンおじさんも、カレンさんも、泣いたりしない。
治癒院の婆さんは言った。
「それは無理だよ」
知ってる。
「そんなことは、できないんだよ」
当然知ってるさ!
「お前、親はいるか? 兄弟は? 親戚は?」
死んだ。みんな死んだ。
「そうかい、そうかい」
婆さんはニヤリと笑い、言った。
「彼女と共に生きたいかい?」
今日も俺は彼女と生きる。危険には近寄らない。それで誰かが死んだところで知るものか。
優しい彼女は分かってくれる。彼女は俺の理解者だ。問題ない。何も問題なんて無い。
そう、問題なんて無かったんだ。あの日彼女の一言を聞くまでは……。
――――ねぇ、ヤガラ。君は、君の心はどうしたがっているのかな?――――
君の身体はもう無い。君は精神は俺の中にある。君は生きているのかな?
俺は勇敢になんてなりたくない。その結果、救えたかも知れない命を溢しても。俺はいきているのかな?
そんなお話。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-03-15 21:18:26
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