現代の日本社会において、企業経営の屋台骨を支えるリーダー・管理職の不足が深刻化している。若年層の昇進忌避、プレイングマネージャーの疲弊、育成の停滞——これらは決して一過性の人材難ではない。企業構造と社会価値観が変化し続ける中、かつての“リー
ダー像”はもはや通用しない時代に突入している。
本書では、まず「なぜ今、リーダーが育たないのか?」という問いに対し、個人の意識の問題ではなく、構造的・制度的な欠陥を指摘する。現代の管理職が抱える過剰な業務負担、曖昧な役割設計、報酬と責任の不均衡は、合理的な若年層の判断によって“避けられる選択肢”になっている。
また、個人の内発的動機を育てる「自己修行型の人材育成」、チームでの自律性を高める「再定義された管理職像」、AIとの協働による「負荷の再配分」など、実務的な改善策と制度改革の視点も論じる。
本書は、リーダー育成の“やり方”を変えるのではなく、“考え方”と“構造”そのものを根本から問い直すための一冊である。未来の組織においては、リーダーとは一部の特別な人物ではなく、成長可能性を持ったすべての人の中に存在する“機能”であるべきなのだ。
持続可能な組織、人材が定着する職場、進化する社会。
その実現のための「構造的再設計」に、今こそ着手すべき時が来ている。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-03-24 18:10:00
48977文字
会話率:3%
総合モーター製造企業として国内最大手の東証一部上場企業である株式会社大日本モーター。その社長である向日重治(61)は、次世代の主力産業として見込んでいるEV関連への出遅れに頭を悩ませていた。商品開発の遅延だけではなく、事業を指揮する人材が
不足している問題も抱えており、これらの解決策を部下と模索していたが決め手に欠けていた。
そんな中、高寺電機株式会社という東証2部に上場している小さな企業に目をつける。高寺電機は元々農機関連のモーターを開発・製造する企業だったが、経営層の放蕩経営もあり売上・営業利益は右肩下がりと縮小の一途。しかし、2年前に新社長として深山耕一氏(35)が就任してから経営改革を断行。資金・人材が不足している中、負債を処分しながらEV関連の部品製造へ進出を始めていたが、徐々にその新製品が市場に認められつつあった。
「この男とこの企業が欲しい」
出遅れている商品開発に加え、新事業を指揮する人材の確保を兼ねた一手として、大日本モーターは高寺電機の買収・子会社化を試みる。しかし、ワンマン経営者として有名だった向日社長の過去の振る舞いが仇となり、紆余曲折の末に買収は失敗。
「私はあなたのやり方を好ましいとは思わない」
大日本モーターは最後の手段としてTOB、株式市場における株の買い占めによる力づくの買収を高寺電機に宣言する。しかしそこに、小規模な企業の買収を専門とするプライベートエクイティRomney Capitalが深山社長の支持を掲げ、友好的な買収を提案するホワイトナイトとして急遽参戦。Romney capitalは大日本モーターと同じく高寺電機を買収し、経営支援による企業価値の増大、その後の株式売却による利益確保を目論む。
「弊ファンドは利益第一ではありますが、余計な手を出して金の卵を生む鶏を殺すほど愚かではありません」
さらなる事業拡大のために高寺電機と深山社長を求める大日本モーター、資金・人材不足を理解しながらも自らの経営理念に拘る高寺電機、利益第一ながらも深山社長の理念に賛同し支援に立ち上がるRomney Capital。
三者三様の思いが渦巻く中、高寺電機を巡る駆け引きが始まる。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-03-17 14:38:49
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