大正の華族令嬢・葉月。美しくも息の詰まる鳥籠のような日々は、一枚の古びた黒い円盤によって打ち破られる。父の遺した蔵で彼女が再生したのは、腹の底を揺るがし魂を鷲掴みにする、未知の音楽――「雷鳴歌」。それは、淑やかな彼女の内に眠っていた、野生の
叫びを呼び覚ます禁断の音だった!
定められた未来も婚約も捨て、葉月は「雷鳴歌」を生み出すという抗いがたい衝動に身を焦がす。古物商・源三郎の導きで手にしたのは、この世の物とは思えぬ異形の楽器たち。彼女が奏でる歪で荒々しい音は、やがて因習に縛られた人々の魂を解き放ち、時代に静かな亀裂を生み出していく。葉月の奏でる「雷鳴歌」とは一体何なのか? そして、彼女の人生を賭けた探求の果てに待つものとは?折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-15 08:00:00
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会話率:15%