母とふたりで暮らしてきたわたしは、ずくなしに育った。男の子にはもったいないくらいの容姿とその反対の貧しさに、同じ年頃の男の子を除き、世間は優しくしてくれた。世間は何かを成すためにあるのではなく、何かを与えてくれるためにあるもの。世間も身内
も壁をつくってきた母とも離れたわたしは、もっと勝手な孤独の中に身を置く。
誰もが嫌な汗をかきながら生きている中で、そんな生き方が続くわけはないのに。それでも、窮してくると、いつも決まって司法書士事務所からの手紙が届くのである。
「突然のご連絡で失礼いたします」から始まる手紙が・・・・・
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-06-19 05:47:40
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