二人は言葉にしなくとも、互いの心を少しずつ知っていく。喫茶店の一隅、歩道を行く足音、夜の静かな時間――どこにでもありそうな日常の片隅で、二人は互いに問いかけ、答え合いながら、ゆっくりと絆を深めていく。
彼女の言葉には、無意識に知恵が宿り、
彼はその一つ一つに驚き、心を開いていく。ふとした会話の中で、知らなかった世界が広がり、彼の心に新たな風が吹き込まれる。それは、知識がただの情報を越えて、二人の距離を縮める力となっていく。彼女の冷静な瞳の奥に見える温もり、彼の無邪気な笑顔に隠された思慮――そのすべてが、二人を結びつける。
物語は、ゆっくりとした流れで進んでいく。日常の中で交わされる会話、たまに見せる沈黙。その静けさの中に、二人の心が少しずつ重なっていくのを感じる。知識と愛が静かに交差し、二人の世界は少しずつ色を変えていく。折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-04-24 11:55:51
4195文字
会話率:66%
夢を持って高校に進学したわけじゃない。夢を持って、大学受験をしようとしているわけじゃない。
ただ、周りがそうであることが当たり前みたいな雰囲気を出すから。親がそうしろって言っているように思うから。
高校三年生。ひたむきに勉強や部活に
打ち込むでも無く、人生において最後の一年間を味わうかの如く大切に過ごすわけでもなく、ただなんとなく過ごしていたはずなのに。
どういうわけか卒業生の残したノートを参考に、演劇部の脚本を書かされている。それもこれも母さんに勝手に部屋を掃除されてポエムノートを発見され、三者面談で声高に「ウチの子には凄い才能があるんですよ」と担任の先生に語ったせいだ。この事実は一部のみが知り、けれど噂という形で流布された。
なので、「白瀬君は物語を書くのが上手」とか「執筆能力がある」と、意味の分からない持ち上げ方をされて、半ば強引に、押し付けられた。
別にそれがキッカケになったわけではない。ただ、これのせいで授業が終わればその足で家に帰り、ゲームをしていたはずの俺は放課後まで居残ることが増えた。
だから、部活動中の彼女と鉢合わせになることさえも、増えてしまった。
彼女は俺の前ではいつも偽りの表情を作る。傍目から見て可愛らしく、愛らしく見えるように。俺だって友達と話す時は大体、口が悪いから友達未満の前では猫を被るから、彼女も素の表情を見せまいと努めているのだろう。
ただ、俺は中学の頃から知っている顔を向けて欲しい。一生懸命に打ち込み、努力し、裏も表も無い、普通の表情を……なんて、そんなのはワガママだ。
考えない方が良い。気付いていないように努力した方が良い。
そうすれば、世界は一気に覆りはしないのだから。
想うなんて馬鹿らしい。心を向けてもらいたいなんて願望だ。そして、言葉にしなくとも伝わるだろうと考えている自分自身が気持ち悪い。
だから、 不思議に思うくらいが丁度良い。秘めているのが、俺にはお似合いなのだ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-08-01 21:40:14
39058文字
会話率:67%
柔らかな雨が、僕の傘をやさしく叩く。
いつもよりも電車が混んでいるのも、大学に人が少ないのも、隣にいる君に、こんなにも心を揺さぶられるのも。
もしかしたら、台風が近づいているからかもしれない。
――台風が近づくとある日の、とある大学
生のお話。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2013-11-24 01:05:49
6872文字
会話率:41%