昔のことだ。僕は眠れないと、いつも母に読み聞かせをねだった。
そんな時、母は決まって伝説の勇者のお話をするのだ。
伝説の勇者、ゼタ・バルセリア。
語られる彼の話に、僕は胸を躍らせた。
カッコいいと思った。
だけれども、自分
でも不思議なほどに、僕は彼への憧れを抱かなかった。
カッコいいと思う。それだけだった。
僕が憧れたのは、民衆にも語られない、本の中でも名前しか出てこないような。
魔王を倒して歴史の表舞台から姿を消していくような。
そんな勇者に、僕はどうしようもなく心惹かれた。
ーーー
彼はなぜ、普通の勇者に憧れたのか。
普通の勇者を目指す先には何があるのか。
そんなお話です。
この作品は勇者シリーズ第2弾ということで、前作、「それでも、勇者は勇者であった。」と同じ世界線の話となっています。
前作を見なくても楽しんで頂けるとは思いますが、作者が喜ぶので出来れば前作も見に行ってやって下さい。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-09-19 20:15:12
7875文字
会話率:7%
魔王城の最上階。
満面の笑みで喜び合う仲間を横目に見ながら、勇者は一人佇み、魔王の死体を睨みつけていた。
彼は徐に拳を握りしめると、魔王の死体に勢いよく振り下ろした。
………魔王の死体には傷の一つもつかなかった。
仲間たちは
勇者をじっと見つめた。
言葉を発する者は誰もいなかった。
反響する衝撃音だけが、いつまでも響いていた。
ーーーーそれでも、勇者は勇者であった。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-08-22 00:43:32
9331文字
会話率:1%