それは、決して破ってはならない「掟」――――
警醒偸官(けいさつかん)の戸田憲固(とだ けんご)は、一人の女被疑者を取り調べていた。
名を犬澄矢那目(いぬすみ やなめ)。
巷をにぎわしている腕利きの泥夢(どろぼう)だ。
泥夢と
は、人の夢から記憶を盗み出す犯罪者。
警醒偸は、泥夢を検挙するため、被害者の無念を晴らすため、日夜眠っている。
ようやく捕まえた彼女を、戸田が取り調べる理由はたった一つ。
六年前に姿を消した世紀の大泥夢、神野右蛻(じんの ゆうせい)の行方を聞き出すためだ。
神野は、過去にも一度姿をくらましたことがあり、現れるたび、街に甚大な被害を及ぼしていた。
泥夢に盗まれた記憶は、その持ち主の頭の中から、永遠に抜け落ちてしまう。
だから戸田は、その行方を追っている。
最後に姿を消す前、神野には弟子がいた。
それが犬澄だ。
彼女は以前、違う名前を名乗っていた。
新田夢姫
不思議なことに彼女は、自分の名前を、どう読むのかわからないという。
記憶を盗られているのか、それとも、知らないふりをしているのか。
戸田の追及に、夢姫は訥々と過去を語り出す。
どうやって神野と出会ったのか。なぜ神野の弟子になったのか。
なぜ、泥夢という犯罪に手を染めたのか。
明かされていく彼女の壮絶な過去と、六年前に起きた「掟破りの日」、その真実――
全てを知った時、あなたは、親子でもない、男女でもない、真の愛を見る。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-04-02 21:00:00
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