東京で心に傷を負い、都会の喧騒から逃れるように信州の山奥・影森村へ移住した主人公・蒼井紗月(あおい さつき)。彼女は偶然、村に古くから伝わる童歌「森のくまさん」の別詞に出会う。それは子どもが遊ぶにはあまりに不穏な旋律と意味深な歌詞で構成され
ていた。
「ある日 森の中 くまさんに 出会った…」
歌に隠されたのは、戦前から続く失踪事件と、村を覆う禁忌の記憶。紗月は心理学の知識を使い、村人たちの無意識に眠る記憶を掘り起こしていくが、やがて彼女自身の幼少期の記憶にも、同じ森が繰り返し現れていたことに気づく。
誰もが忘れようとした過去。語られない死。そして、人ではない「何か」が森の奥で待っている。
全五章を通じて描かれるのは、トラウマ、集団心理、記憶の再構築。物語の最後、無垢な歌は暗黒の真実へと反転し、「くまさん」が誰(何)であったかが、読者に突きつけられる。
繊細に散りばめられた伏線が、静かに、そして容赦なく回収される物語。
大人のための、狂気と優雅さが交差する暗黒寓話。折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-06-06 19:00:00
5378文字
会話率:13%
これまた或る音楽から想を得た幻想譚。ここに登場する「獣」は以前紹介した『獣が死んだ夜』の獣とは全くの別物らしい。推測するに黒森が用いる「獣」と云う単語は、どうやら固有名詞等ではなく、また完全に一般名詞と云う訳でもなく、やや擬人的な観念を描
きたい時に用いる記号の一種なのだろう。一時は暗黒寓話ものに変えようかと思って途中まで書き掛け、結局気分が乗らずに元の路線へ戻したらしいのだが、話を聞いてみるとこちらも結構面白そうで、原稿を破棄してしまったのが惜しまれる。その内また書き直してみろと焚き付けるのもいいかも知れない。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-08-15 19:37:38
5130文字
会話率:0%
舞台は「暗黒寓話」シリーズのものと同じらしいのだが、内容が寓話とは呼び難く、語り口も全く違うので、シリーズの中には含めなかったらしい。最後の部分の語り方を変えることによって、他の世界観への広がりを持たせている。
最終更新:2021-08-15 19:22:51
3104文字
会話率:0%
〈暗黒寓話〉シリーズの一篇。第21回ゆきのまち幻想文学賞(2011年)落選作品。賞に合わせて書かれた為、雪がテーマとなっている。
最終更新:2011-03-28 10:50:49
3454文字
会話率:0%