唯一の肉親である母に看取られ、病院で静かに息を引き取った青年芸術家は、次元の境界線を越えて異世界に転生し、人間でない種族のひとりとなる。
生まれてからしばらくは夢うつつの状態が続き、前世の記憶も曖昧だったが、三歳になったときに自我がしっ
かりと確立し、以後は順当に成長していく。
人間年齢換算で十五歳になったとき、唯一の肉親にして族長たる者から課題が出される。
内容は、『人族の世界』へ行き、人間年齢換算で十六歳になるまでに、祖先達が人族に貸し与えた『農具』を全て回収せよというものだった。
『人族の世界』は『元青年芸術家が生まれ変わった種族の世界』とは違い、地球世界の紛争地域以上に混沌としている。
それでも族長の命令は絶対であり、元青年芸術家は従うしかなかった。
計画された偶然、交錯する裏切り、親しき者の死、張り巡らされた陰謀、偽りの戦い……。
ときには傷付き、ときには倒れ、また別のときには涙を流しながらも、元青年芸術家は愛と正義と画材道具を鞄に詰め、どこまでも続く青空の下、清濁入り乱れた人の世を旅していくのだった。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2015-06-16 23:07:06
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