朝起きてから夜寝るまでのことすら覚えていられない幼なじみの少女。見舞いに来ない親の顔も、学友も、自分の名前すら忘れてしまったという。
そんな彼女が自分の名前を放り出してまでも、大切に忘れないように抱えている願いを叶えてやりたくて、俺は彼
女を連れ出した。彼女はそれを教えてはくれないけれど、たった一つだけお願いをされた。
『私の名前を呼んで』
だけど俺は、どうしても思い出せなくて……。
「なぁ。名前、思い出せねえよ」
「良いよ。まだまだ先は長いんだから!」
「どこまで行くんだ、なぁ?」
「言えないよ。でも、シュウと一緒に行きたいんだ」
「……なぁ」
俺は、思い出せるまでコイツのことを、『なぁ』と呼ぶことにしている。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2013-02-01 02:37:32
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