夜盗『寝首かき一味』四人が料亭兼布佐を襲い、主の兼吉を斬殺して金子を奪い、一歳の娘由紀を拐かした。女房の布佐は深手を負ったが、神田佐久間町の町医者竹原松月に助けを求めた。
町医者竹原松月は円満寺の丈庵住職と共に、夜盗が布佐を口封じせぬよ
う、布佐を円満寺に匿い、事件を内々に北町奉行に知らせた。
北町奉行は布佐を下女として円満寺に匿わせ、その一方で手をまわし、事件当夜、祖父母の元に泊っていた十歳の子息の芳太郎に仇討ち許可証文を与え、将来料亭兼布佐の身代を継いで北町奉行所の密偵となるため、北町奉行人知れず裏から料亭兼布佐を仕切り、芳太郎に板前修業と武芸修業させた。
翌年。廻船問屋黒川屋に夜盗が入り、抜け荷の儲け三千両と、裏大福帳七冊が奪われた。黒川屋安兵衛は同業者の仕業だと探りをかけ大黒屋に潜入した。己の裏大福帳一冊を大黒屋の奥座敷で見つけた六冊は無かった。これは罠だと気づき己の正体の発覚を恐れ、裏大福帳をそのままにして黒川屋に逃げ帰った。その後、盗まれた黒川屋の裏大福帳一冊が北町奉行所に届けられ、黒川屋の抜け荷が発覚して黒川屋安兵衛は捕縛された。安兵衛は詮議で、黒川屋に入った夜盗について一部始終を語った。夜盗は間違いなく大黒屋清兵衛だが、物証がなかった。
事件から五年後。元服した芳太郎は板前修業と武芸修業を終え、料亭兼布佐の板前を続けながら北町奉行所の密偵として賭場に出入りして父を殺害した夜盗を探ったが夜盗が大黒屋である証は掴めなかった。手掛りは兼吉の女房の布佐が見た夜盗の一人の右胸にあった辰巳下がりの彫り物だけだ。与力の藤堂八郎は黒川屋に夜盗が入った事件を語り、大黒屋清兵衛を探らせた。
さらに五年後。御上の指示で、布佐は円満寺を出て高利貸しをはじめた。芳太郎は賭場に出入りして、昇り龍の龍芳と名乗り、無頼漢に探りをかけ、大工の又八と親しくなった。芳太郎は、頼まれれば何でもする始末屋、と己の生業を話した。又八は龍芳を信用した。
その二年後。北町奉行の指示で、藤堂八郎は布佐に芳太郎を会わせ、芳太郎は料亭兼布佐の事件の詳細を知る。その後、金貸しの利息を二倍にした布佐の家に、又八が夜盗に入ったが、布佐は、龍芳は始末を依頼している身内だと話し、又八から、大黒屋の番頭の三吉が語った夜盗の手口を聞きだし、藤堂八郎に伝えたが、番頭の三吉が夜盗である物証は無かった・・・。
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最終更新:2024-11-17 09:57:17
70627文字
会話率:36%
妖達の世界「日ノ本」
その世界は 一つの権力の中心である黄帝・麒麟を帝に据えた【京】を中心に、北は玄武の【奥州】 、東は青龍の【江戸】、西は白虎の【四國】南は朱雀の【阿蘇】と4つ都市があり、その周りにさまざまな国が連なる世界となっている。
その中、気っ風の良さと行動力、そして風を操る若き青龍将軍収める江戸は 小鉱石川にある 八百万商【細石屋】の住人と、それを取り巻く江戸の妖衆の騒動顛末記、である。
登場人物
【細石屋】住人
★細石屋主人 ・ 漣那美(さざれやあるじ ・ さざなみ)
?歳 雛色の長く波打つ髪を背中の真ん中でゆるりと一つに結い、翡翠色の瞳の美しい若い女人の形をとったモノ。
人か妖か鬼神は不明。着物を粋ににきこなし、紅い羅宇の長煙管を燻らせ、不思議な言葉使いをしている。
★春霞(はるか)
15歳 男 黒髪に碧玉の瞳。細石屋 漣那美の養い子。
この世界にあって大変珍しい「人間」だが、赤子の頃からここに住んでいるためそんな意識はなく、他の妖と生活基準や価値観は一緒、
妖のような攻撃や変化を行う力は持ち合わせていないが、15年ぶりに本人へ返された彼の血脈に寄り添う管狐によって身辺はしっかり守られている。細石屋の小僧のかたわら、飾り職人の真似事も行なっている
★零 (れい)
17歳 男 桜色の髪に橘の瞳の長身痩躯で粋ですれ違い女が振り返るようないい男。
妖ではあるが力の強さや種族は不明。葦原遊郭において随一の花魁「珠月見太夫」に大変見目麗しくよし、と、彼女専属の道中での傘持ちをやっているが、基本的には細石屋の小僧…居候。 飄々とした感じで、女物の反物で設えた着物を着流し、道中用の中が朱色、外が射干玉色をした中朱番傘をさしている。
背中に美しい桜と狗と白狐の彫り物がある。チャキチャキの江戸っ子。
星駒(ほしこま)
13歳 猫又。
空色の瞳に淡い黄金色の髪。
下総国猫の郷の出で、実家は郷長の薬草園。父親は上総下総を統治する猫神。
5男8女の兄妹の中でも1番末の娘だが、1番妖力が高い。白の多い三毛猫で、日の本の猫には珍しい長毛。
猫又治療院 猫仙人である宗龍先生の元に、修行を兼ねて奉公に出されたが本人は大江戸での玉の輿を狙っている
★意図しておかしな喋り口調を使っているキャラがいます
★物書き再開後のごく初期の作品です
★アルファポリス様にも掲載中折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-06-25 00:00:00
98873文字
会話率:45%
「彫師」に絵を掘られた者は、特別な能力に目覚める。
最終更新:2023-06-14 22:08:26
1019文字
会話率:62%
戦国時代の末ごろ。日光のとある川のほとりで若い彫り物師が自殺に適した濁流をさがしていた。実はもう場所は決まったが覚悟がなかなか決まらずにいた。
日光ではある寺院の大造営が行われており、この彫り物師も参加していたのだが、ちょっとばかり評判
になったせいで天狗になり自分を見失って世俗的な作品を仕上げてしまった。いよいよお披露目の日に自分の堕落ぶりに気づいた彼は己の愚かさに絶望したのだ。
自殺することにしたが決心がつかずうろうろしているうちに雷雨にあい、ついその場を逃げてしまったとき、謝って彼は深い洞窟に落ちる。失神したあと目をあけるとそこには巨大な龍が寝ていた。
龍は人間が落ちてきたことに気がついてはいたが相手にしなかった。龍は天界軍を率いる大将軍で今は戦闘中であり、またかなりの傷を負っていた。何よりも戦争の原因となった宝玉を龍は天帝より預かっており、つまらない人間など眼中になかった。
ところが若い彫り物師のほうは龍に夢中になった。その造形があまりにも完璧で美しく思えたのだ。なめるように龍を観察した若者だが、とうとう龍の開いた目を見たくてたまらず、無理に龍を起こしてしまった。
若い彫り物師は自分の熱狂を龍に語り、その完璧な美が戦いによって傷つけられていることに憤り、ついには龍の持つ万能の宝玉でその体の傷を自ら癒すべきだと力説する。
しかし龍は別の目的にその玉を使った。その何でも見通す玉の力で若者のみじめな現状をさぐりあてたのだ。己の愚かさとみじめさもかえりみずに上位の存在たる自分に意見することをなじり軽蔑する龍。若者はいっぺんにへこんでしまった。
龍がそう思ったのもつかの間、若者は再び活気を取り戻した。やっと自分の彫りたいものがわかった、それは龍の完璧な美しさだ、だから自分はまだ生きたいと息巻いたのだ。
思わぬ反撃に心を打たれた龍は戦いに戻っていき壮絶な戦死を遂げた。
何十年か後。年老いて名人となった彫り物師は龍の生まれ変わりの青年の訪問を受ける。
あの日の自分の美と憧れへの情熱に打たれて自分に弟子入りするため転生したという龍を彼は受け入れ共に創作の道を歩むのだった。
そして時は現代。彼らの作品が我々に訴えかける……
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-09-06 21:35:39
16608文字
会話率:36%
ある日刺青師の彫松はある男から彫り物の依頼を受けた。それは今話題の江戸小町の浮世絵を彫ってほしいとのことであった。後日不思議な出来事に遭遇するのだが……。
とびらの様主催「TSゴールデン企画」参加作品。
最終更新:2017-05-05 17:55:56
7162文字
会話率:18%