――ぼくは時々、夢を見る。
その夢で、ぼくは井戸のそばに座っている。井戸の底からは、不思議な歌が聞こえる。それはぼくを安心させ、落ち着かせてくれた。でもそれは、井戸なんかじゃないし、自分でも何なのかはよくわかっていない。
……ぼくの
お父さんは人殺しだ。
そのことを知ったのは、偶然だった。お父さんの部屋で、ノートを見つけたのだ。そのノートには、今までに殺してきた人たちのことが、詳しく書かれていた。名前、住所、生活スケジュール、殺害計画、その結果――
でも、そのことをぼくは気にしたりしない。だって、ぼくには関係のないことだからだ。それは世界の裏側で起こったのと同じことだった。ぼくには何の影響もないし、興味もない。日常に支障さえなければ、お父さんが人殺しだったとしても、たいした問題じゃない。
お父さんは今日も朝ごはんを食べるし、ぼくは小学校に行く。
でも、ある日、そのノートにクラスメートの名前が書かれていて――
(16/6/30~16/7/7)折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-06-28 00:00:00
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会話率:4%