俺こと、門藤春海《かどふじはるみ》は、ちょっと訳ありな家庭環境で育ったことを除けば、至って普通の高校一年生である。
夏休み前の終業式の日に、自分の下駄箱に入っていたラブレター(仮)に誘《いざな》われ、不思議な少女――リリー・エルコットと
出会う……まではな。リリーはとても可憐な容姿をしているけど、言ってることは常人には理解できない電波少女だ――と、当初は俺も思っていた。
そんなリリーに、半ばというか、ほぼ強制的に異世界へと連れてこられた俺は、嘗《かつ》て感じたことのない感動に胸が熱くなり、夢見ていた非日常的世界へ来れたことに、心躍るワクワクとした気持ちを……確かに、このときまでは感じていたんだ…………。
――そう……。それは、これから暴かれる残酷な世界の真実と、そこから始まる熾烈な争いに自分が巻き込まれていくことになるのを……まだ知らずにいただけだった――
各世界から代表者を一名選抜し、世界の生き残りを懸けて闘い合う総合闘技大会――最終審判《ラグナロク》。
自分たちの世界を守るためにリリーと俺は結託し大会への出場を決意する。俺たちに残された期間はたったの二週間。他層世界の異能力者に勝つべくトレーニングに明け暮れる日々はあっと言う間に過ぎて行き……、ついに最終審判《ラグナロク》の開幕日がやって来る。
俺は初戦の相手である一人の少女と闘うことになるが、何の因果か……、この導きが運命の歯車をより加速させることとなる。過酷な現実を背負った薄幸の美少女――ルナ。何やら並々ならぬ事情を抱えている彼女と死闘を繰り広げる最中、その凍てついた紅玉の瞳が俺を映す内に……いつからか知らず知らず胸の奥底へと封印していたあの日の記憶が甦る――。
これは己の運命に立ち向かった少年と、己の運命に抗った少女が、世界の垣根を越えて出逢い、世界の存亡を懸けて闘った――知られざる救世主たちの物語である。
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